『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』を読みました。
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「知的生産の本質」について書かれた本で、序章の「この本の考え方」に非常に共感でき、読んでいて面白かったです。 「犬の道」という表現が出てくるのですが、まさに生産性の違いの本質を簡潔に表している気がしました。
印象に残ってる部分を復習がてら簡潔にまとめてみます。
「悩む」と「考える」は違う
- 悩む - 「答えが出ない」という前提
- 考える - 「答えが出る」という前提
根性に逃げるな
- 労働時間なんてどうでもいい
- うさぎ跳びを繰り返してもイチローになれない
良いイシューとは
- 本質的な選択肢である
- 深い仮説がある
- 答えを出せる
1次情報に触れる
- 1次情報とは誰のフィルター通ってない情報。
- 2次情報だと「情報を切り出した断面」になってしまう。
「集め過ぎ」と「知り過ぎ」のデメリット
- 集め過ぎる新しい取り込みのスピードが鈍る
- いわゆる100%までの労力とそれ以下までの労力の相関の話
- 知識が増えすぎると、その知識の枠で答えが出せてしまうので知恵が減る
- 「知り過ぎたバカ」にならないように注意
脳は「異質な差分」を協調して情報処理をする
- 脳は「異質な差分」を協調して情報処理するように進化している
うどんの匂いが食べているうちに数パーセント弱くなってもすぐには察知できない。 同じ形のグラフやチャートが続くと、2枚目以降に関しては認知する能力が格段に落ちる。
「理解する」とは「情報をつなぐこと」
- 脳神経系では「2つ以上の意味が重なりつながったとき」と「理解したとき」は本質的に区別できない
- 「情報のつなぎ」が起こらないと記憶は消える
- 「情報のつなぎ」を繰り返すことで理解が進み記憶が定着する
いくつも手法をもつ(固執しない)
- 「もっている手札の数」「自分の技となっている手法の豊かさ」がバリューを生み出す人としての資質に直接的に関わる
- 最初の5年や10年はなるべく広い経験とスキルの育成に励むべき
完成度よりも回転数(エレガントよりもスピード)
- 何度も取り組む(回転をあげる)ことでレベルを上げる
- こちらもいわゆる100%までの労力とそれ以下までの労力の相関の話
「デルブリュックの教え」
ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ
「賢いが無知」というのが基本とする受け手の想定となる。
実験の2つの結果
- もし結果が仮設を確認したなら、何かを計測したことになる
- もし結果が仮設に反していたら、何かを発見したことになる
仮説が崩れたら「発見だ!」と思うぐらいの気持ちでよい。
本当にイシューかどうか振り返る
「この作業ってほんとうに意味があるのか?」と思ったら立ち止まって、「それは本当にイシューなのか?」と問いかけることからはじめる。
感想
一言でまとめてしまうと正しい問題*1設定と仮説検証が重要、という話だと思います。 この本では、これをいかにうまくやれるかが生産性に大きく寄与するということの説明と、それを実践するための手法や考え方について書かれています。
序章の「考え方」についてが本当に「知的生産における生産性の本質」をついてると感じるので、是非そこだけでも読んでみて欲しいです。
「犬の道」に踏み込まないように気をつけていきたいですね。
知的生産の本質を教えてくれる良い本でした。
*1:日本語の「問題」だと、"problem", "issue", "question" と意味が広いので、この本では意味を明確にするために「イシュー」と呼んでいるんだと思います。