現代標準イギリス英語、正確にはイングランド南部で主に話される Contemporary Received Pronunciation (または Modern PR) における発音のまとめです。
どんな英語かというと「ロンドンなどで話される英語」であり「イギリス英語教師が一般に教える英語」です。
雑に言ってしまうと「いわゆるイギリス英語」のことです。
英語はかなりアクセントによって発音に差があり、ネイティブ同士でも理解できないケースがあるのですが、 この英語を喋っておけば、大体の人が理解してくれます。 要は通じやすい英語なので、教師が教えるし、学習者も勉強します。
以下、面倒なのでこれを「イギリス英語」と呼んでしまいます。
目次
- 初歩(ほとんどの辞書に載ってる)
- R の消失 (non-rhotic)
- O の発音 (/ɒ/ と /əʊ/)
- A の長母音化 (/ɑː/)
- 基本(載っている辞書もある)
- 「ウア」の「オー」化 (Cure–force merger)
- 応用(辞書に載ってるのを見たことが無い)
- T の消失 (Glottal T)
- 「トュ」の「チュ」化と「ドュ」の「ジュ」化 (Yod-coalescence)
- 「イア」の「イー」化と「エア」の「エー」化 (二重母音の長母音化)
- オススメリンク集
初歩(ほとんどの辞書に載ってる)
かなり基本的な内容です。辞書にも載ってるし、有名な内容です。
R の消失 (non-rhotic)
イギリス英語は基本的に non-rhotic であり、ざっくり言うと、母音の前の R しか発音しません。 具体的には、Car, Port, bird の R は全て発音しません。Caught と Court は全く同じ発音 (Homophone) になります。
その結果面白いことに、イギリス英語の Heart とアメリカ英語の Hot が、発音記号上は同じ発音だったりします。
O の発音 (/ɒ/ と /əʊ/)
短母音の O の発音は「オ /ɒ/」です。アメリカ英語だと「ア /ɑ(ː)/」になります。 そして二重母音の O では曖昧母音が使われ /əʊ/ と発音されます。アメリカ英語では「オウ /oʊ/」です。
A の長母音化 (/ɑː/)
アメリカ英語では「ア /æ/」や「エイ /eɪ/」の音が使われる単語で 「アー /ɑː/」が使われるケースがあります。 これはまさに南部イングランドにおけるアクセントの特徴です。
Bath, Vase, Tomato, Dance, France, Half, Cast, Castle, Task, etc.
基本(載っている辞書もある)
大きい辞書には載ってた内容です。と言っても、現状一項目しか無いです。
「ウア」の「オー」化 (Cure–force merger)
Modern PR では「ウア /ʊə/」の音が「オー /ɔː/」になっています。 Cure–force merger と呼ばれる変化です。
例えば、Poor と Pour が同じ発音 (Homophone) になります。
Your, Sure, Poor, Cure, Europe, etc.
応用(辞書に載ってるのを見たことが無い)
辞書には載っていない音の変化です。Modern PR を教えている動画では紹介されてたりします。
T の消失 (Glottal T)
ざっくり言うと、母音にフォローされない T の音が消えます。正確には Glottal Stop に置き換えられます。 Glottal Stop は声帯閉鎖音のことです。おそらく T 以外でも起きますが、T の場合が顕著です。
例えば Meet you はアメリカ英語だと「ミーチュー」のようになりますが、イギリスだと「ミーユー」のようになるケースが多いです。
この記事の範囲外ですが、コックニーアクセントではこの Glottal T が超高頻度で発生します。 Bottle of water の T が全部消えます。Modern PR ではここまでのことは起きないです。
「トュ」の「チュ」化と「ドュ」の「ジュ」化 (Yod-coalescence)
Y の音が合体 (Yod-coalescence) して、「トュ/tj/」の「チュ /tʃ/」化と「ドュ /dj/ 」の「ジュ/dʒ/」化 が起きます。 Tube が「チューブ」になり、deuce が「ジュース」になります。 そして During は Cure–force merger の影響もあり「ジョーリング」になります。
ちなみにアメリカ英語では、Y の音が消失します(Yod-dropping)。 Tube が「トゥーブ」になり、deuce が「ドゥース」になります。
「イア」の「イー」化と「エア」の「エー」化 (二重母音の長母音化)
曖昧母音で終わる二重母音 (Centring diphthongs) の長母音化により、「イア /ɪə/ 」の「イー /ɪː/」化と「エア /eə/」の「エー/ɛː/」化が起きます。 この 「イー /ɪː/」の音は「イー /iː/」とは違うので注意してください。どちらかというと「エ」に近いです。カタカタな表記の限界ですね……。
Beer, Bear, fair, fear, Nightmare, etc.
曖昧母音で終わる二重母音の長母音化ですが、実は Cure–force merger もコレの一種です。 この結果、Modern PR では Centring diphthongs が完全に消失しつつあります。