「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~」を読んだ
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~」を読みました。
非常に読みやすい、簡潔に書かれた本でした。 会計を軸にした、それにまつわる数字の見方の良いヒントを与えているような本だと思います。
非常に簡潔にまとまっているからこそ、読む際に気を付けるべきこともあるな、という印象もあります。 簡潔にするために、本来あるべき変数をざっくり取っ払っていたり、やや極端な言い回しをしている部分もあるので、そのまま全てを悪い意味で鵜呑みにしないようにだけ気を付けたほうが良いとは思います。
ただ、この説明のために不必要な箇所をバッサリ落とすということができている点で、良書だと思います。 そしてそれがよく読まれている理由でもあると思います。
まさに昨日読み終えた「思考の整理学」を読んで感じた、相手に合わせた適切な量と質の教授を行うことがうまくできている本だと言えると思います。
読みながらむしろ教える立場の気持ちになりながら、どこまで単純化して話すかって難しいんだよなぁ……とか思ってました。 ニュートン物理学が量子力学から見ると不正確という言い回しをどこかで聞いたことがあり、なんだかそれを思い出しました。
巨視的なスケールで、かつ光速よりも十分遅い速さの運動を扱う際の、無矛盾・完結的な近似理論
何が言いたいかといいますと、とある系では真であるというか、十分な精度な理論というのはあり、これを学習過程での話に置き換えてみると、初学者やそれ以下の素人にとってみれば十分に真と言える内容はある、ということです。上級者からすると不正確でも、その人のレベルにとっては十分に真足りえる、という話です*1。
例えば、在庫管理のところで例に出している「(本を)一か月読まなかったら捨てる」という部分です。製造業での在庫管理を家庭での例に置き換えた話ですが、厳密には個人が所有している本と製造業での在庫を同じように扱うのは極端ですよね。もちろん、例としては申し分なくわかりやすいですが、こういうのをそのまま鵜呑みにして「確かにそうだ!本は1か月読まなかったら捨てよう!」とするのは早計です。これについては本の性質や所有で得られるメリット、管理コストなどのほかの変数を考えて行うように……!*2
あまり注意点ばかりに注目してしまうと、本が良くなかったという印象を与えそうなので止めておきます!「簡潔化されている部分も多いから気を付けてね!現実にはもっと変数(考慮すべきこと)はあるよ!」というだけで、数値の捉え方や会計の考え方を学ぶのに良くできた良書だったと思います。
特にさおだけ屋がつぶれない謎、ベッドタウンにさして繁盛してなさそうな高級フランス料理店がある謎、在庫だらけの自然食品店の謎など、非常に楽しく読め、そして会計的に説明するとどうなっているのか、といったことがザックリ学べて、とても面白いです。
最後に、個人的に良かったなと思う部分を抜粋します!
本業があるから副業が成り立ち、また逆に、副業があるから本業が成り立つ。
例えばソニーがなぜ音楽事業や映画事業を行っているか、そのような視点で考えたこともなかったので目から鱗でした。
本当の人脈とは、相手の背後に存在する未知の人物まで取り込むものである
確かにその通りで、100人の頼りにならない薄い人脈より、本当に頼れる人脈のほうが、確実に助けになりますよね。
「どうすれば物事を的確にとらえることができるようになるのか?」ということにチャレンジしつづけているのが「会計」という学問
会計という学問を的確に表した、いい言葉だと思いました。
誰もが楽しめる、そして実生活に役立てれるような考え方が紹介された、良い本だったと思います。