「シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―」を読んだ
「シリコンバレー式 最強の育て方 ―人材マネジメントの新しい常識 1on1ミーティング―」を読みました。
かなり胡散臭いタイトル(シリコンバレー、最強、新しい常識……)ですが、
- 1on1 をなぜ行うか
- 1on1 で何を行うか
- 1on1 をどのように行うか
という、WHY/WHAT/HOW をすべて簡潔に網羅した良書でした。
1on1 って結局なんなのよ?という人は、とりあえず読んでみると得られるものがあると思います。
個人的には「緊急度は低いが重要度が高いものにフォーカスする」というのは、なるほどな、と感じました。 緊急度が低いと重要度が高いもの、例えばメンバーのキャリアやモチベーションなどは、緊急度の低さから、取り掛かりが遅れて、取返しが付かないケースになることはありそうですよね。
この本を読んでぜひ最強を育てて行きましょう。笑
「英単語の語源図鑑」を読んだ
「英単語の語源図鑑」を読みました。
語源系の本は少なくとも3冊目読んでいますが、こちらの本は網羅的かつビジュアルでの説明が常に付帯しており、読み進めやすかったです。
どのタイミングの語彙力で読んでみても、一定以上発見がある良い本だと思います。 ただ、あまりにも学習の最初期ですと、「なるほど!」と思うための語彙力が足りない可能性があるので、基本単語はあらかた覚えた段階で一度目を通してみると良いかなと思いました。
登場する単語のほとんどは知っている単語でしたが、知っている単語でも各々のパーツの語源は知らなかったりで、発見がなかなかにありました。今後新しい単語に出会った時の記憶に助けになるかなと感じました。
ちなみに、過去に読んで面白かったなと思った語源系の本は以下の二冊です。
語源系の本は、ボキャブラリ自体等よりは背後にあるキャパシティというか、関連情報の整理が進むので、気が向いたタイミングで気が向いた本を読むといいかなと感じます。全部を暗記しようとして読むよりは、学習の段階ごとに気に入った本を一度だけ通読してみる、でも良いと思います。
それにより今後新しい単語を辞書で引いたときや、知っている単語を見直したときに、語源への意識と、それからくる別単語へのつながりが感じられるようになると思います。
ぜひ目を通してみてください!
「なっとく!アルゴリズム」を読んだ
「なっとく!アルゴリズム」を読みました。
- 作者:アディティア・Y・バーガバ
- 発売日: 2017/01/31
- メディア: Kindle版
特に大事だと思われる、基本となるアルゴリズムを丁寧にわかりやすく説明してあります。
簡単な内容一覧は以下の通りです。
正直、大半は学生時代に習った(ことになっている)はずですが、ダイクストラ法以降は貪欲法を除いて、名前しか覚えてないレベルでした……。 データ構造とアルゴリズムは学生時代最も苦しかった授業の一つなので、まぁ仕方ないと言えば仕方ないと思います。
学生時代と言えば、コンピューターサイエンス系の授業はたいてい苦しみ、ソフトウェアエンジニア系は楽しめた、という記憶が薄っすらあります。 最も苦しんだ科目は英語でしたが……閑話休題。
これらのアルゴリズムを全てを即座に使いこなせる必要はないと思いますが、どういう問題のときにどういったアルゴリズムを使うと良いかというザックリとしたインデックスを頭に張っておくのは、非常に重要だと思います。特に基本となるデータ構造については、知っておいて全く損はないです。
本当にわかりやすく書かれているので、「アルゴリズムが理解できる!」という自信に、そして、最初の一歩になる本だと思います。 特に未経験からソフトウェアエンジニアしてる人は是非読んでみると良いと思います*1。
以下、読んだことをあとで思い出せるように、簡単なまとめです。
1章から6章までは、基礎の基礎という感じでした。自分でも覚えているようなことが大半でした。 また、8章の貪欲法も「各ステップで局所最適解を選ぶ」というものなので、こちらも覚えていました。
ただ、6章のトポロジカルソートについては、名前と雰囲気だけ知っている状態だったので、しっかりと把握できてよかったです。 雑に言ってしまうと DAG を並べ替えて "any of the sorted items appears after its dependencies (the ones which the item in question is dependent on)" な状態にすることです。
ダイクストラ法も名前しか知らなかったです。そしてもう詳細な内容は忘れました……。 ただ、どういうときに適応できるかを思い出せるように抜き出しておきます。
9章の動的計画法については、ぼんやりと知っている……というレベルでした。 端的に言うと、部分問題先にを解くことで難しい問題を解く手法です。
個人的に少しややこしいなと思ったのが、動的計画法と分割統治の違いでした。 どちらも同じように問題の分割をするからです。
違いとしては、
- 分割統治は、部分問題の解の組み合わせが最終解になる(例:クイックソート)
- 動的計画法は、部分問題の解を再利用して、最終的に最終解を導き出す(例えば部分問題の解を二次元配列にメモ化 memoization しておき、それを計算に再利用していく)
という違いがあります。要は動的計画法は、次の部分問題を解くためにその前の部分問題を解いておく、というように、解の再利用が必要になります。
例えばナップサック問題であれば、まずはサイズ最小、物品一つから始めます。 そして物品が一つの場合の最適解を全てのサイズで解き、次に物品を二つの場合を解きます。 この際、物品が一つの際の最適解を利用します。そしてこれを繰り返します。
大事なことの一つに、部分問題が他の部分問題に依存していてはならない、というものがあります。 部分問題の解が再利用ができなくなってしまうからです(つまり解いたと思ってた部分問題は解けていなかったということ)。
動的計画法は、制約を前提として何かを最適化する際に役立ち、問題を互いに依存関係のない部分問題に分割できるときに使えるアルゴリズムとなります。
10章は k 近傍法でした。まさか回帰の話がアルゴリズムの本に入ってるとは思わなかったです。 こういう機械学習よりのアルゴリズムは、あまりアルゴリズム本で見ない印象でした。あまりアルゴリズム本を読んでないので間違った印象な可能性も高いですが。
特徴量、分類、回帰と、基本的なことに触れていて良かったです。 機械学習への入り口として非常にわかりやすいと感じました。
最後にひとつ、大事だと思った文を抜き出しておきます。
複雑なテクノロジーてあってと、そのベースとなっているのは k 近傍法のような単純なアイデアであることを理解しておくことが重要
読みやすく良い本でした!
ついに人生で初めて連続勤続年数が3年を超えた
2017年の1月頭に今の会社に入ったので、ついに勤続年数が丸3年を突破し、4年目に突入しました!
ロンドンのスタートアップに加入して丸3年以上経過していた。4年目突入!人生で初めて同じ会社で3年以上働いてるぞ!
— 雀巽(じゃくそん) (@necojackarc) January 13, 2021
世間では「とりあえず3年」などと言われますが、3社目にしてついに3年を超えました!
今のところ、この「とりあえず3年」を守らなかったことによるデメリットは全くないです。気づいてないだけかもしれませんが。 それどころか、前2社を去ったタイミングは、完璧だったなとすら感じています!
1社目の日本ユニシスは1年8か月と2年も経たずに辞めてしまいましたが、今振り返ると、かなり良いタイミングでピクスタに加入することができました。
結果として、ピクスタの新規事業 fotowa にリードエンジニアとして参加することができ、サービスをゼロから立ち上げるかなり貴重な経験ができました。アサインの判断をしてくださった経営陣にはもちろん今でも感謝をしています!
あと、そういえば在籍中にマザーズ上場企業にもなりましたね! ストックオプションも持ち株もなかった*1ので、正直特に個人的には何も変化はありませんでしたが……。笑
そして感謝をしつつも、ワーホリの年齢制限を考えた結果、ピクスタからは2年8か月で去りましたが、これまた今振り返ると、絶妙なタイミングでした。
結果として、IMMO Investment Technologies の創立直後に加入することができ、明日をも知らぬ真のスタートアップで働くことができています。
基礎の部分は既に当時の CTO が作り上げていましたが、一つ目のサービス開発からガッツリと関わり続けています。 会社のエンジニアの人数が自分を含めて CTO だけの合計2人という状態から、事業を育てていくことに関われているのがとても面白いです。
ベンチャーキャピタルからの投資ってこんな感じなんだ~という感じで、ほんのりシリーズ A の手続きにも関わりました。 CTO から頼まれた作業を少ししただけなので、本当にものすごくほんのりですが。
まぁ、正直安定とは程遠い、波乱万丈な感じはしていますが……この波乱万丈な感じが人生初の連続勤務3年超えにつながったのかもしれません!
果たしてこのまま走り続けることができるのだろうか……!ここはおそらく止まったら死ぬ世界線……!
あと、いつの間にか目標になっていた「海外で働く」というのも達成できました。正直達成できると思ってなかったので、運が良かったとしか思えないです。奇跡だ。
そんなこんなで、とても楽しくやれてるので、ロンドンでこれからも引き続き頑張ります!
Happy New Year 2021
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくおねがいします!
年越しはロンドンの自宅で迎えました。 自宅で正月を迎えたの、正直久しぶりすぎて何年振りかすら覚えてないです。
ハッピーニューイヤー!お家から見えるところで花火が沢山あがってるー!! pic.twitter.com/He2ifLDw0T
— 雀巽(じゃくそん) (@necojackarc) January 1, 2021
早速ですが例年通り、簡単な2020年の振り返りをします!
キーイベント
2020年の最も大きなイベントは結婚したことです! パンデミックの始まる直前の2020年1月11日、ロンドンのウェストミンスターで結婚式を挙げてきました。
日本と違って式を挙げないと結婚できないというか、式を挙げることで婚姻が成立する、個人的にはとても自然なシステムだったのですが、その分手続きが日本よりも多いかつ、イギリスでの挙式後に日本側での手続きも必要だったりと、なかなか大変でした。正直、パンデミック前に挙式からビザの発行まで全部終わって、ホントに良かったと思います。ビザ申請センター、申請に行った次の営業日からパンデミックの影響で閉鎖してました……ギリギリ……!
ただ、イギリスで結婚して、つまりイギリスで結婚式を挙げて、ホントに良かったなと思います。 日本で結婚するよりも、かなり印象深く思い出に残る式になったんじゃないかと思います。
詳細は以下の記事にまとめてありますので、興味のある方はご覧ください!
テーマ
2020年のテーマも引き続き、
- 挑戦
- 英語
- 健康
でした!それぞれ振り返っていきたいと思います!
挑戦
挑戦、特に何か新しいことに取り組む、新しいことを学ぶことをテーマとしていました。 具体的には以下を挙げていました。
- 興味が湧いたら即行動を試みる
- 未知のジャンルの本なり記事なりを読む
これらについては、ある程度日常レベルでできているかなあと思いはします。
特に仕事上では色々と新しいことに挑戦できたと思います。 これまで使ったことのない技術やなんとなく避けていた技術に手を出してみたり、外部との折衝をやるようになったりなどです。
わかりやすい例だと「CTO がこれまでやっていた仕事の一部を現在受け持っている」というのがあります。
もちろん会社の事情でやらざるを得なくなった部分もありますが、自分から行動してる部分も多いので、挑戦と言って差し支えないと思います。 具体的には「必要だと思うことを自ら見つけて取り組んだ」ということをしていたと思います。 問題発見と問題解決に積極的に取り組んだ、というとわかりやすい気もします。
ここ数年は、退職、カナダへワーホリ、スタートアップへ入社、ロンドンへ移住、など、大きな変化を伴う挑戦が目白押しだったので、相対的に挑戦感が弱く感じてしまいますが、「何か新しいことに常に挑戦している」というのは小さくとも実践できていると思います。
怒涛の転換期は過ぎ去った気がするので、次の大きな変化へ向けての、良い意味での準備期間が今なのかなと思います。
小さい挑戦を繰り返して次の大きな転換期を迎える準備を続けていければいいなと思います。
英語
英語、特にリスニングと語彙の増強をテーマとしていました。 具体的には以下を挙げていました。
- 映画やドラマのリスニング
- 12000語レベル程度の語彙
映画やドラマのリスニングについては、ついに、とうとう、やっと、満を持して取り組み始めました。 Netflix などでドラマを見る分量が明らかに増えてきたので、この調子で多聴を習慣化して行きたいと思います。
語彙に関しては、正直集中して取り組んでは全くいません。12000語、具体的にはアルクの SVL12000を意識して書きましたが、 こちらは究極の英単語 で一気に効率的にさらいたいなと思っていましたが……やはりどうしても単語帳とは一生仲良くなれる気が……。
ただ、ニュースや情報摂取を自然と英語でやるようになり、多読をし始めることができたので、こちらは多聴と同様、徹底的に習慣化して行きたいと思います。
英語学習を始めてから1度も単語帳学習をまともに成功させれてないので、効率は完全に捨てて、多読多聴に一本化するのが現実かなと思っています。
健康
健康、特にスポーツと食生活をテーマとしていました。 具体的には以下を挙げていました。
- テニスと筋トレの継続
- 1日7時間睡眠
- 満腹時の間食をやめる
- 満腹まで食べるのをやめる
満腹まで食べたり間食をしたりはまだやってますが、1日7時間睡眠以外は取り組むことができました。
実際明らかに体格が良くなってきているので、これらは継続したいと思います。 そして、健康とパフォーマンスの維持のためにも、睡眠時間の確保も頑張りたいと思います……。
2021年のテーマ
メインテーマは引き続き「挑戦・英語・健康」とし、サブテーマやタスクを次のステップに向けたものに一部変更し、以下の通りとします!
- 挑戦(常に新しいことに取り組む/を学ぶ)
- 興味が湧いたら即行動し、小さくとも新たな挑戦をし続ける(次の大きな挑戦への備えとなる)
- 既知に囚われず未知に触れ続ける(未知のジャンルや技術も問題解決の選択肢として常に考慮する)
- 英語(多読多聴)
- 英語の映画やドラマを積極的に視聴する
- 英語の本を積極的に読む(特に小説など、これまであまり英語で触れてきていないジャンルがベスト)
- 健康(スポーツと食生活)
- テニスと筋トレの継続
- 1日7時間睡眠
- 食事は満腹を避け常に腹八分目以下にする
そして今年ももちろん、
将来の自分が過去の自分に向かって胸張れる存在になれるようにマイペースに生きていきたい
という自分の言葉と、
『小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道』
というイチロー選手言葉を今年も大切にしていきたいと思います!
2021年も最高に楽しんでいきましょー!
ぴーす!
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~」を読んだ
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?~身近な疑問からはじめる会計学~」を読みました。
非常に読みやすい、簡潔に書かれた本でした。 会計を軸にした、それにまつわる数字の見方の良いヒントを与えているような本だと思います。
非常に簡潔にまとまっているからこそ、読む際に気を付けるべきこともあるな、という印象もあります。 簡潔にするために、本来あるべき変数をざっくり取っ払っていたり、やや極端な言い回しをしている部分もあるので、そのまま全てを悪い意味で鵜呑みにしないようにだけ気を付けたほうが良いとは思います。
ただ、この説明のために不必要な箇所をバッサリ落とすということができている点で、良書だと思います。 そしてそれがよく読まれている理由でもあると思います。
まさに昨日読み終えた「思考の整理学」を読んで感じた、相手に合わせた適切な量と質の教授を行うことがうまくできている本だと言えると思います。
読みながらむしろ教える立場の気持ちになりながら、どこまで単純化して話すかって難しいんだよなぁ……とか思ってました。 ニュートン物理学が量子力学から見ると不正確という言い回しをどこかで聞いたことがあり、なんだかそれを思い出しました。
巨視的なスケールで、かつ光速よりも十分遅い速さの運動を扱う際の、無矛盾・完結的な近似理論
何が言いたいかといいますと、とある系では真であるというか、十分な精度な理論というのはあり、これを学習過程での話に置き換えてみると、初学者やそれ以下の素人にとってみれば十分に真と言える内容はある、ということです。上級者からすると不正確でも、その人のレベルにとっては十分に真足りえる、という話です*1。
例えば、在庫管理のところで例に出している「(本を)一か月読まなかったら捨てる」という部分です。製造業での在庫管理を家庭での例に置き換えた話ですが、厳密には個人が所有している本と製造業での在庫を同じように扱うのは極端ですよね。もちろん、例としては申し分なくわかりやすいですが、こういうのをそのまま鵜呑みにして「確かにそうだ!本は1か月読まなかったら捨てよう!」とするのは早計です。これについては本の性質や所有で得られるメリット、管理コストなどのほかの変数を考えて行うように……!*2
あまり注意点ばかりに注目してしまうと、本が良くなかったという印象を与えそうなので止めておきます!「簡潔化されている部分も多いから気を付けてね!現実にはもっと変数(考慮すべきこと)はあるよ!」というだけで、数値の捉え方や会計の考え方を学ぶのに良くできた良書だったと思います。
特にさおだけ屋がつぶれない謎、ベッドタウンにさして繁盛してなさそうな高級フランス料理店がある謎、在庫だらけの自然食品店の謎など、非常に楽しく読め、そして会計的に説明するとどうなっているのか、といったことがザックリ学べて、とても面白いです。
最後に、個人的に良かったなと思う部分を抜粋します!
本業があるから副業が成り立ち、また逆に、副業があるから本業が成り立つ。
例えばソニーがなぜ音楽事業や映画事業を行っているか、そのような視点で考えたこともなかったので目から鱗でした。
本当の人脈とは、相手の背後に存在する未知の人物まで取り込むものである
確かにその通りで、100人の頼りにならない薄い人脈より、本当に頼れる人脈のほうが、確実に助けになりますよね。
「どうすれば物事を的確にとらえることができるようになるのか?」ということにチャレンジしつづけているのが「会計」という学問
会計という学問を的確に表した、いい言葉だと思いました。
誰もが楽しめる、そして実生活に役立てれるような考え方が紹介された、良い本だったと思います。
「思考の整理学」が知的活動におけるベストプラクティスの宝庫だった
「思考の整理学」を読みました。
さすが刊行から30年以上経っても読まれ続けているベストセラーなだけあり、目が覚まされる本というか、これまでぼんやりと感じていたようなことがしっかりと言語化され、整理されている本でした。 タイトルに「整理学」とあるように、「わかる」「確かに」と思うようなことがしっかりと整理され、載っています。多くのことが自分の思考や知的活動のヒントになるのではないでしょうか。
正直「安いし買ってみるか」と買った本だったのですが、買って正解でした。 500円ちょいと滅茶苦茶安いのでぜひ買いましょう!
せっかくなのでいくつか印象に残った箇所をまとめてみたいと思います。
教え方
チームメンバーや部下、そして教え子に求めることというのは、当然必要な知識や技術を身に着けてもらうことがまずあると思いますが、自分で新しい知識、情報を習得する力を身に着けてもらうことも大事だと思います。少なくとも個人的にはこの二つ、特に後者を大事にしているつもりです。
この本で書かれおりハッとさせられたのは、
教える側が積極的でありすぎる。親切でありすぎる。何が何でも教えてしまおうとする。それが見えているだけに、学習者は、ただじっとして口さえあけていれば、ほしいものを口へ運んでもらえるといった依存心を育てる。
という箇所でした。正直、これは思い当たる節がありすぎるなと思いました……何かを教えようとすると、積極的にあれもこれもと教えてしまいたくなります。
例えば C 言語を教わる際などに、「これ*1は動かすためのおまじない」などのように説明されることが非常に多いです。後から意味を気づいたときに「なんだ!おまじないって言ってたけど、ちゃんと意味があるじゃん!」のように思い、自分が相手に教える際は、おまじないなどと言ってごまかさず、最初からどういう意味か教えてあげよう、と積極的に教えたくなったりします。そして、この積極性こそが、後続の学習者にとって有益であると……しかし、これは錯覚というか、自己満足というか、学習者の状況によっては逆効果しかないな、というのにこれを言われて思い至りました。
教えないことが、かえっていい教育になっている
本書では、あえて教えないことで好奇心を働かせる効果があると書いてありました。例えば昔の職人がすぐに弟子にあれこれ教えないのは、この狙いもあったのだろうと。 もちろんすべて見て学ばせるだけ、というのは効率の面で劣る点がありますが、少なくとも弟子からすると、長期間好奇心とフラストレーションを刺激されることは想像に難くないです。 現代の少年漫画ですら、意味を教えずにトレーニングをさせ、自分で考えさせ、気づかせるということをやっていたりしますね。もちろん、徹底的に何も相手に教えないのであれば、効率が悪い、人によっては一生気づかないかもしれない、などのデメリットはあるとは思います。
間違いなく言えそうなことは、相手に合わせた適切な量と質の教授を行うというのは非常に有用である、という点だと思います。
これにより、
- 情報量が適切になるので、学習者が圧倒されず、最も伝えたい意図が伝わる可能性があがる
- 全てを教えているわけではないので、学習者の知的好奇心を刺激する可能性がある
と思います。確実に自発性を身に着けさせる方法はないかもしれませんが、適切に相手の好奇心を刺激し続けるというのは大事なことだと思いました。
思考の醸造
寝かせること、忘れることの重要性、そして無意識の時間の重要性について書かれています。
日本語では「考えを寝かせる」そして英語では "sleep on it" と言った表現があるように、しばらくそれについて放置してみることの重要性というのは、意識的か無意識的か認知されていたのだと思います。 実際仕事でも「次の日の自分に期待」などと言って諦めて帰ってみると、翌日は嘘のようにその問題が解決できたり、ぼんやりとほかのことをしている最中に解決案が浮かんだりもしますよね。
そういった、多くの人が感じてる「入浴中や散歩中にいいアイデアが浮かぶ」といったような話について、しっかりとした言及があります。
端的にまとめてしまうと、
- 同じことについて考え続け過ぎない
- しっかりと忘れ、頭を騒がせないようにする
- 無意識の時間の重要性を理解する
ということです。これを見て思い出したのが「先延ばし魔の頭の中はどうなっているか」という TED トークです。
こちらも無意識の力について、触れています。確かに経験的にも、集中して同じことについて考え続けているよりも、いったん頭をリフレッシュしたほうが良い発想ができたりします。
そしてこのリフレッシュという単語についても面白いことが触れられていました。実は英語では refreshments は「軽食」の意味もあるのです。 気分を変えるには食べたり飲んだりが有効というのも、言語に知見として残ってるのは面白いなと思いました。
このあたりいろいろなことが書かれているのですが、詳細は原著に任せるとします。
忘れる重要性
既に上で軽く触れてますが、忘れる、というのは重要です。思考を醸成するために不可欠とすら言えるかもしれません。 ただ、頭をそのことから離し切る、というのは言うほど簡単ではありません。どうやってうまく忘れるか、これについても触れられています。
例えばメモを取っておく。そうすると安心感から忘れる、などのようなことが書いてあります。これは非常に実感があります。 個人的にも TODO リストを忘れて、一つのことに集中するためのツールとして使っています。
あとは、上ですでに触れた軽食,そして運動や難読なほかの本を読んでみるなど、言われてみればその通りのことですが、忘却の重要性を意識してみると、こういった方法を選択肢として持っておくことの大切さがわかります。
思考の整理とは
思考の整理というのは、低次の思考を、抽象のハシゴを登って、メタ化して行くこと
優秀な人というのは、大なり小なりこの抽象化を常に行っていると思います。 具体と抽象の行き来の重要性については、認識している人は多いと思います。
ソフトウェア開発におけるデザインパターンも、まさにこの整理の結果の抽象化だと思います。
ことわざ
具体例を抽象化し、さらに、これを定型化したもが、ことわざの世界である。
現代まで生き残っている人類による抽象化の結果と捉えると、なんか良いなあと思います。そして確かにその通りかもしれません。
まとめ
正直細かい部分を抜き出すとキリがないですが、本当に多くのことが書かれています。 例えば書くことの重要性(書くことで整理が進む)、声に出すことの重要性(頭が違った働きをする、ラバーダッキングの有用性にも通ずる)、専門外に触れることの重要性(新しい発想が得られる)などがあります。
このように多くのことが書かれている理由は、著者が、
- 人の発想はその人なりの型によって規制される
- 自分の考え方を意識するには、ほかの人の型にれるのが有効
- 思考や思考の整理については簡単に教えられない
- 技術や方法を読者に提供しようという意図はない
と考えているからかなと思います。こちらについてはあとがきで触れられています。
著者なりのベストプラクティスを著者なりの整理・抽象化をもって、親しみやすい語り口でつらつらと語る、という本です。 その中から何か、自分なりの何かを感じ取れたら素晴らしい、そういうようは話なんだと思います。
最後に、個人的にこの本を端的に表す、最も重要なセンテンスと感じたのは以下の一文でした。
思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。
「一度理解してしばらく忘れる」ことは知的活動において非常に重要だと思います。
無意識下の自分に、色々な関係のないようなことも取り込ませながら、難しい問題を解かせましょう!
*1:#include <stdio.h> が代表例